猫と私と
近所にキャットストリートがある。原宿のではない。
猫が常に数匹目撃されるので、夫との会話では自然にあの道はキャットストリートだと決まった。「猫道がね」と言っていたのだが。
私は猫が好きだ。犬も好き。一部を除く動物を好む。
近所のキャットストリートを歩き始めた初心者だが、徐々に触らせてくれる猫が現れた。
みーちゃんである。ひねりもなんもない安易な名前だが、三毛猫なので利便的にみーちゃんと呼んでいる。
みーちゃんは新参ものの私に出さえ興味を示してくれた。
始めは指のにおいを嗅がせ、頭を撫でられたと思ったら腰まで撫でさせてもらえた。
だが微妙な距離を保たれたままだ。
手をぐっと伸ばした範囲では触らせてもらえる。だが近づくとその分距離を保たれる。
腕一本分がみーちゃんとの世界だった。
が、しかし毎日撫でさせていただけると、徐々に距離が近くなっていった。
近くまで寄らせていただけるようになったのだ。
3ヶ月もすると喉、お腹まで撫でさせて頂けるようになり、お世話になっております引き続きよろしくお願いいたします。
だが、悲劇は訪れる。
寒い冬のある日、みーさんが私の後をついてきた。
しきりにみゃーみゃー泣き、私の顔を見ながらついてきたのだ。
みーさんの行動範囲である角っこを過ぎ、なおかつ犬がほえる魔の「狂犬ビリーの家」を越えてでもついて来る。
「みーさん、ほんと申し訳ないのですが、うち賃貸なんです。あと私猫アレルギーなんです。」
って言ってもこちらの諸事情過ぎて胸が張り裂けそうになる。
みーさんはまだみゃーみゃー言いながらついてくる。
すると向こうから人が。
みーさんはその人に気をとられている隙にダッシュした。
ダッシュってギリ中学生までだよね。
次の日、10m先から私を見つけ鳴きながらダッシュをしてくるみゃーさんの姿が!
「あああほんとごめんなさいぃぃぃぃ」
家の周りを3周し、みゃーさんが自分のテリトリーに匂いをつける隙にダッシュで逃げた。
心苦しくてキャットストリートを通れなくなっていた。
だが止まない雨はない。終わらない冬もない。
暖かくなってきたのだ。
満を持してキャットストリートへ。
みーさんは居た。おちんたまを舐めながらそこに居てくださった。
「覚えていますか。不義理なわたくしめであります。」
指を鼻にもっていった。
みーさんは興味がないようにくんくんしたあと、またおちんたまを舐め始めた。
出会ってまだ1年だね。私が終わりにしたこのヒストリー。
エピソード0からまた始めよう。
3ヶ月たったみーさん。相変わらず鳴きながら10m先からダッシュしてくるけど、私の後にはついてこない。
みゃーさんの後を私がついていく。
その先にはケンカ相手がいてとっくみあいになったり、新入りの子猫を毛づくろいし始めたり。
みーさんはかっこいい。
オスの中のオスだ。
正確な性別はわからないけど。
だって猫飼ったことないし、みー様の聖なるお股間を拝見するなんてなんておこがましい。
P.S
私が猫に敬語なのは「キャッツ」と「キリコ(西加奈子)」の影響だ。人前では決して猫を撫でたり、話しかけたりできない。恥ずかしいからだ。小市民だからだ。